表計算ソフトの作業で時間を取られるのは、関数の書き方を調べる時間と、もらったデータを整える時間です。どちらもAIで短くできます。
ただし、計算そのものをAIにさせてはいけません。この区別が分かれ目になります。
計算を任せてはいけない理由
「この表の合計を出して」とAIに頼むと、数字を返してきます。その数字が合っているとは限りません。桁を間違える、1行飛ばす、といったことが起きます。
正しい使い方は、計算式を作らせて、計算はソフトにさせることです。
| 頼み方 | 結果 |
|---|---|
| 「合計はいくつですか」 | 数字が返る。検算が要る |
| 「合計を出す計算式を教えてください」 | 式が返る。ソフトが計算する |
下の頼み方なら、間違いが起きても式を見れば分かります。数字だけを受け取ると、どこで間違えたのか追えません。
関数を作らせる
これが最も効く使い方です。やりたいことを日本語で伝えれば、式が返ってきます。
Excelの計算式を教えてください。 【表の形】 A列:日付 B列:取引先名 C列:金額 D列:入金済みかどうか(「済」または空欄) 【やりたいこと】 指定した取引先の、今月分で、まだ入金されていない金額の合計を出したい 条件: ・式だけでなく、何をしている式なのかも説明してください ・古いバージョンでも使える書き方を優先してください
最後の条件を入れる理由は、新しい関数を使った式が返ってくることがあるためです。会社のソフトのバージョンによっては動きません。「使えませんでした」と伝えれば、別の書き方を出してくれます。
式が長くなった場合は、「この式が何をしているか、部分ごとに説明してください」と頼んでください。中身が分からない式を使い続けると、あとで直せなくなります。
エラーの原因を調べる
式を入れたのにエラーが出る、という場面でも使えます。式とエラーの表示をそのまま貼って、「原因として考えられることを挙げてください」と頼みます。
よくある原因は次のようなものです。
- 数字が文字として入っている(右詰めになっていない)
- 余分な空白が入っている
- 参照する範囲がずれている
- 全角と半角が混ざっている
1つ目と4つ目は、他社からもらったデータでよく起きます。見た目では分かりません。AIに聞けば、確認する手順まで出てきます。
表記のゆれを直す
顧客名簿や商品リストで、同じものが違う書き方で入っている状態です。「株式会社〇〇」と「(株)〇〇」、「東京都千代田区」と「千代田区」といったものです。
この状態では、件数を数えても正しい数が出ません。AIに列の内容を渡して、「同じものを指していると思われる表記を、グループにまとめてください」と頼むと、ゆれが一覧で出ます。
出てきた一覧は人が確認してください。別の会社なのに似た名前というだけで、同じものとしてまとめられることがあります。支店や事業所が分かれている場合はとくに注意が要ります。
確認が済んだら、置換のための対応表を作ります。これも「変換前と変換後の2列の表にしてください」と頼めば出てきます。
データの形を変える
もらったデータが、そのままでは使えない形になっていることがあります。
- 1つのセルに住所と電話番号が一緒に入っている
- 日付が「2026年9月1日」と「2026/9/1」で混ざっている
- 金額に「円」や「,」が入っていて計算できない
- 横に並んだ月別のデータを、縦持ちに変えたい
こうした作業は、手でやると時間がかかり、途中で間違えます。AIに変換の手順か、式を出させてください。データそのものを変換させると、件数が合わなくなることがあります。
変換したあとは、件数が変換前と同じかを確かめてください。ここが最も事故の起きやすい場所です。
繰り返す作業を自動化する
毎月同じ手順を繰り返している作業があるなら、その手順を自動で動かすしくみを作らせることもできます。
やりたいことを日本語で説明すれば、プログラムが返ってきます。プログラムを書いたことがなくても、貼り付けて動かすところまでは進められます。
ただし、この使い方には注意が要ります。
- 必ず控えを取ってから試すこと。ファイルを書き換えるプログラムは、失敗すると元に戻せません
- 中身が分からないまま使わないこと。「この部分は何をしていますか」と聞いて、説明できる状態にしてください
- 作った人しか直せない状態を作らないこと。何をするプログラムか、どこに置いてあるかをメモに残してください
3つ目は、属人化の新しい形です。自動化したものの、作った担当者が辞めた後に誰も触れなくなる、という事例があります。手作業に戻せる手順も、あわせて残しておいてください。
データを外部のAIに入れてよいか
表計算ソフトで扱うデータには、顧客名簿、売上明細、給与のデータが含まれます。これをそのまま貼り付けるのは避けてください。
多くの場合、データを渡す必要はありません。
- 式を作らせたいだけなら、列の構成を説明すれば足ります(「A列に日付、B列に金額」など)
- 表記のゆれを調べたいなら、社名の列だけを渡し、金額や連絡先は渡さない
- 見本が要る場合は、実在しない数行を作って渡す
給与、マイナンバー、口座情報を含むデータは、外部のサービスに渡さない運用にしてください。判断に迷う場合は入れない、で構いません。式の作成だけなら、データがなくても答えは出ます。
なお、データを渡さずに式だけを作らせる進め方には、もう一つ利点があります。列の構成を説明する過程で、自分でも表の作りを整理できます。説明しにくい表は、たいてい作りに無理があります。1つのセルに複数の情報が入っている、見出しが2段になっている、といった点が、説明しようとすると見えてきます。
まず試すなら
いま手が止まっている集計を1つ選び、列の構成とやりたいことを説明して、式を出させてみてください。調べる時間がなくなります。
数字を扱わない作業では、会議の議事録や日報と週報もまとめています。どこから手をつけるかはAI活用を始める前に確認しておきたいことをご覧ください。
ここで扱っていない業務については、どの業務からAIを使い始めるかから探せます。議事録、見積書、メール、資料作成、問い合わせ対応など、作業別に分けてあります。
AIの使い方を学ぶ教材と業務で使えるツールをまとめて用意したい場合の選択肢として、当社ではライモBizをご案内しています。AI Labは合同会社SOL COMODAが運営する代理店で、本サービスの公式サイトではありません。

