取引先から送られてきた契約書を、そのまま押印していませんか。読んではいるが、どこを見ればよいか分からないまま進んでいる、という会社は多いと思います。
AIは、この作業を手伝えます。ただし法律の判断をさせることはできません。何ができて何ができないかを、先に整理します。
AIは法律の専門家の代わりにならない
最初に押さえておきたい点です。AIが出した内容は、法律上の助言ではありません。
- 条文の解釈が、実際の裁判例と異なることがあります
- 法改正に追いついていない情報を答えることがあります
- 業種ごとの規制や、その契約特有の事情を知りません
- 間違えたときに責任を負う主体がありません
金額の大きい契約、長期の契約、これまで結んだことのない種類の契約は、弁護士に確認してください。AIは、その前の段階で使います。
AIに向く使い方
| 使い方 | 向き |
|---|---|
| 分かりにくい条文を平易な言葉に直す | 向いている |
| 契約書の構成を一覧にする | 向いている |
| 自社に不利になりうる箇所を挙げさせる | 気づきのきっかけとして使える |
| 前回の契約書との違いを出す | 向いている |
| この条項が有効かどうかの判断 | 任せられない |
| 署名してよいかの判断 | 任せられない |
上から4つは、読む作業を助けるものです。下2つは判断であり、人が引き受ける部分です。この線を越えなければ、実用的に使えます。
条文を平易な言葉に直す
最も使いやすいのがこの用途です。読んでも意味が取れない条文を、そのまま貼って聞きます。
次の契約書の条文を、専門用語を使わずに説明してください。 【条文】 (該当箇所を貼る) ・誰が、何をする義務を負うのか ・どういう場合に、どうなるのか ・期限や金額の定めがあれば、その内容 条文に書かれていないことを補わないでください。 解釈が分かれうる箇所があれば、その旨を書いてください。
最後の1行を入れておくと、あいまいな条文を見つけやすくなります。そこが後から揉める箇所です。その部分だけを専門家に相談すれば、費用も抑えられます。
見落としやすい条項を確認する
契約書には、普段読み飛ばしている箇所に重要な定めが入っています。
- 契約期間と自動更新。いつまでか、更新を止めるには何か月前に伝える必要があるか
- 中途解約の条件。途中でやめられるか、違約金があるか
- 支払いの時期と方法。締め日と支払日、振込手数料の負担
- 損害賠償の範囲。上限の定めがあるか、どこまで負うのか
- 秘密保持の範囲と期間。契約終了後も続くのか
- 管轄の裁判所。争いになったとき、どこで裁判をするか
この一覧をAIに渡して、「それぞれの定めが契約書のどこにあるか、内容とともに示してください。書かれていない項目は『記載なし』としてください」と頼みます。
「記載なし」が出た項目に注意してください。書かれていないこと自体が問題になる場合があります。中途解約の定めがなければ、原則として期間満了まで続きます。
前回との違いを出す
更新の契約書や、同じ取引先からの2回目以降の契約で有効な使い方です。
前回の契約書と今回の契約書を並べて渡し、「変わっている箇所をすべて挙げてください。表現だけの変更と、内容が変わっているものを分けてください」と頼みます。
長い契約書を目で見比べると、見落とします。1文字の違いで意味が変わる箇所を、機械の方が正確に見つけます。ただし、出てきた一覧が漏れなく全部かどうかは保証されないため、重要な契約では人も目を通してください。
読み方で迷いやすい表現
契約書には、日常の言葉と意味の違う表現が使われます。意味を取り違えたまま進むと、後で困ります。
| 表現 | 確認したいこと |
|---|---|
| 「協議の上」 | 合意できなかった場合どうなるかが書かれているか |
| 「速やかに」「直ちに」 | 具体的な期限が別に定められているか |
| 「善良な管理者の注意」 | どこまでの注意が求められるのか、業務内容と照らす |
| 「甲の指定する方法により」 | 相手が一方的に決められる範囲がどこまでか |
| 「やむを得ない事由があるとき」 | 何が該当するのか例が示されているか |
こうした表現を見つけたら、「この条文で、〇〇の場合はどうなりますか」と具体的な場面を挙げて聞いてみてください。答えが出てこない場合、契約書に定めがないということです。
定めがない部分は、法律の原則によることになります。それが自社に不利かどうかは、専門家でないと判断できません。気になる箇所を絞り込んでから相談してください。
自社から出す契約書を作る場合
「業務委託契約書を作って」とAIに頼むと、それらしい契約書が出てきます。これをそのまま使うのは避けてください。
理由は2つあります。自社の取引実態に合っていないこと、そして法改正や業種の規制が反映されているか分からないことです。
現実的な進め方は、たたき台をAIに作らせ、それをもとに専門家に相談することです。何もない状態から相談するより、聞きたい点がはっきりします。相談の時間が短くなる分、費用も抑えられます。
契約書を外部のAIに入れてよいか
契約書には、取引先名、金額、取引条件が含まれます。多くの契約書には秘密保持の条項があり、内容を第三者に開示しないと定めています。
外部のサービスに全文を貼り付ける前に、次を確認してください。
- その契約書自体の秘密保持条項が、どこまでを制限しているか
- 入力した内容が学習に使われない設定になっているか(利用規約とデータの取り扱いに関する記載を確認する)
- 相手方の同意が要る内容ではないか
実務上は、社名と金額を伏せ、条文だけを渡す方法で大半の用途は足ります。「甲」「乙」のまま、金額を「〇〇円」に置き換えても、条文の意味を確認する目的には支障ありません。
まず試すなら
いま手元にある契約書の中で、意味の取りにくい条文を1つ選んで、平易な言葉に直させてみてください。社名と金額は伏せて構いません。
書類を扱う作業では見積書と提案書の下書き、社内の文書では作業手順書をまとめています。どの業務から手をつけるかはAI活用を始める前に確認しておきたいことをご覧ください。
ここで扱っていない業務については、どの業務からAIを使い始めるかから探せます。議事録、見積書、メール、資料作成、問い合わせ対応など、作業別に分けてあります。
AIの使い方を学ぶ教材と業務で使えるツールをまとめて用意したい場合の選択肢として、当社ではライモBizをご案内しています。AI Labは合同会社SOL COMODAが運営する代理店で、本サービスの公式サイトではありません。

