1日に何十通もメールを書いていると、文面を考える時間が積み重なります。とくに、断りの連絡、日程の調整、お詫びの一報は、書き出しで手が止まります。
このあたりはAIで短くなります。ただしそのまま送れる文面が出てくるわけではありません。下書きとして使い、事実の部分だけを直す、という進め方が現実的です。
AIに向くメールと、向かないメール
| 種類 | 向き | 理由 |
|---|---|---|
| 日程の調整、資料の送付 | 向いている | 型が決まっていて、間違えても直しやすい |
| 断りの連絡 | 向いている | 角の立たない言い回しを出すのが得意 |
| 問い合わせへの一次返信 | 向いている | 過去の回答を材料にできる |
| お詫び | 下書きまで | 原因と対応は人が確認する必要がある |
| 条件交渉、値段の話 | 向かない | 言い方一つで結果が変わる |
| 人間関係がこじれている相手 | 向かない | 経緯を知らないため的外れになる |
下2つは、時間がかかっても自分で書いた方が早く片づきます。AIに書かせた文面を直しているうちに、最初から書いた方が短かった、ということになりがちです。
指示の出し方で文面が変わる
「丁寧なメールを書いて」と頼むと、長くて回りくどい文章が出てきます。日本のビジネスメールとして不自然な、翻訳調の言い回しが混ざることもあります。
次のように、条件を具体的に指定してください。
取引先へのメールの下書きをお願いします。 ・相手:〇〇(付き合いの長さ、立場) ・用件:〇〇 ・伝えたいこと:〇〇 ・伝えたくないこと:〇〇 条件: ・300字程度 ・前置きは2行まで ・箇条書きを使ってよい ・こちらから提案していない日程や条件を書き足さないでください
「伝えたくないこと」を書いておくのが効きます。たとえば断りのメールで、断る理由を詳しく書かれると困る場面があります。指定しないと、AIは親切のつもりで事情を説明します。
文字数の指定も入れてください。指定しないと長くなります。読む側の負担が増えるだけです。
自社の文体を覚えさせる
過去に自分が送ったメールを3通ほど貼り付けて、「この書き方に合わせてください」と指示すると、文体が近づきます。
合わせたい要素は、たとえば次のようなものです。
- 書き出しの挨拶(「お世話になっております」を使うかどうか)
- 署名の前に入れる一文
- 「いたします」と「します」のどちらを使うか
- 箇条書きを使うかどうか
この見本をメモに残しておき、毎回貼り付けて使います。社内で共有すれば、担当者が変わってもメールの調子が揃います。
断りのメールを例にすると
最も手が止まりやすい「断りの連絡」で考えてみます。取引先から提案を受けたが、今回は見送る、という場面です。
指示を「断りのメールを書いて」だけにすると、理由を丁寧に説明した長文が返ってきます。これは多くの場合、こちらが望む形ではありません。次のように条件を足します。
取引先からの提案を見送る連絡の下書きをお願いします。 ・相手:3年ほど取引のある仕入先 ・見送る理由は書かないでください ・今後も取引は続けたい ・250字程度 ・次の機会にまたご相談したい旨を1文入れてください
「理由は書かないでください」を入れる点が重要です。断りの理由は、書けば書くほど反論の材料になります。社内の事情を説明する必要がない相手なら、書かない方が後腐れがありません。
出てきた文面を見て、硬すぎると感じたら「もう少し砕けた調子で」、そっけないと感じたら「相手への感謝を1文足して」と指示を重ねます。一度で決めようとせず、2〜3回やり取りする方が早く仕上がります。
送る前に見る3か所
下書きをそのまま送ると事故が起きます。見るべき場所は決まっています。
- 日付と数字。「来週の水曜日」が何日なのか、AIは正しく計算できないことがあります
- 約束していること。「対応いたします」「ご用意します」と書かれていないか。こちらが決めていないことを、AIが勝手に引き受けている場合があります
- 相手の名前と社名。別の案件の情報が混ざることがあります
2番目が最も多い問題です。丁寧な文面を作ろうとして、AIは前向きな言葉を選びます。その結果、まだ社内で決まっていないことを約束した文面になります。
問い合わせへの返信をまとめて楽にする
同じような質問が繰り返し来る場合は、1通ずつAIに書かせるより、回答の型を先に作っておく方が早くなります。
過去半年の問い合わせメールをAIに読ませ、「よく来る質問を10個にまとめて、それぞれの回答案を作ってください」と頼みます。出てきたものを人が直して、返信の定型文として保存します。
この作業は一度やれば済みます。以降は、その定型文を選んで少し直すだけになります。毎回AIに頼むより、この方が速い場面は多いです。
ただし、定型文に入れてはいけないものがあります。金額、納期、在庫の有無です。これらは案件ごとに変わるうえ、古い数字が残ったまま送られると、そのまま約束したことになりかねません。定型文には「別途ご案内します」とだけ書き、数字は毎回人が入れる形にしてください。
メールの内容を外部のAIに入れてよいか
メールには相手の氏名、連絡先、取引条件が入ります。外部のサービスに貼り付ける前に、次を確認してください。
- 入力した内容が学習に使われない設定になっているか(利用規約とデータの扱いに関する記載を確認する)
- お客様との契約で、情報の取り扱いが制限されていないか
- 個人情報を含むメールを扱う場合の社内ルールが決まっているか
実務上は、氏名と社名を伏せて渡すだけで、ほとんどの用途は足ります。「A社のBさん」で下書きを作らせ、送る前に実名に直す、という進め方が無難です。
まず試すなら
次に書く「資料送付のご案内」を、一度AIに下書きさせてみてください。型が決まっていて、間違えても影響が小さい種類です。
同じ考え方で短くできる作業として、会議の議事録と見積書・提案書の下書きもまとめています。どこから手をつけるか迷う場合は、AI活用を始める前に確認しておきたいことをご覧ください。
ここで扱っていない業務については、どの業務からAIを使い始めるかから探せます。議事録、見積書、メール、資料作成、問い合わせ対応など、作業別に分けてあります。
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