研修をやった。ツールも契約した。それでも、使っているのは一部の人だけ。導入した会社でよく起きることです。
原因は、やる気でも年齢でもありません。自分の仕事で使う場面が見えていないだけです。ここを外さない進め方を整理します。
研修をやっても使われない理由
一般的な研修では、AIのしくみや、できることの説明が中心になります。聞いたときは分かった気になりますが、翌日から使われません。
理由は単純で、自分の仕事のどこで使うかが、説明されていないからです。「文章を要約できます」と聞いても、要約する場面が日常にない人には関係のない話です。
もう一つ、研修で扱う例が一般的すぎることもあります。「ブログ記事を書く」という例を見せられても、ブログを書かない人には響きません。
全員に一度に教えない
最初から全社に展開すると、たいてい失敗します。順番があります。
| 段階 | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1人が試す | 興味のある人が、自分の仕事で使ってみる | 2〜4週間 |
| 部署内で広げる | 効いた作業を、同じ仕事の人に伝える | 1〜2か月 |
| 他部署へ | その部署の作業に合わせて、やり方を変える | 状況による |
1段階目で大切なのは、「うまくいかなかった」も成果として扱うことです。試して合わなかった作業が分かれば、他の人が無駄な時間を使わずに済みます。
自分の仕事で試させる
教えるときは、その人が今日やる仕事を題材にしてください。
進め方は簡単です。
- 「今日の仕事で、面倒だと思っている作業は何ですか」と聞く
- その作業を一緒にやってみる
- うまくいったら、次回も同じやり方でできるようメモを渡す
30分あれば足ります。説明を1時間聞くより、自分の仕事が10分短くなる体験の方が、はるかに強く残ります。
このとき、うまくいかない作業を選ばないよう気をつけてください。最初の体験が失敗だと、そこで止まります。文章の下書き、要約、書式の整形あたりから始めると、外れが少なくなります。
指示の書き方を共有する
同じツールを使っても、指示の書き方で結果が大きく変わります。ここが最も差が出る部分です。
うまくいった指示文を、そのまま貼り付けて使える形で共有してください。社内の共有フォルダにテキストファイルを置くだけで構いません。
残す形は次のようにすると使いやすくなります。
- 何をするための指示か(1行)
- 指示文そのもの(そのまま貼れる形)
- 使うときに書き換える箇所(〇〇の部分など)
- 注意点(この用途には向かない、など)
この蓄積が、会社としての資産になります。個人の頭の中にあるうちは、その人が辞めると消えます。
苦手な人への対応
パソコンの操作に慣れていない人ほど、AIの恩恵は大きくなります。文字を打つのが遅い人は、音声入力と組み合わせると変わります。
ただし、進め方には配慮が要ります。
- 大勢の前で操作させない。できないところを見られることを、負担に感じる人がいます
- 用語を使わない。「プロンプト」ではなく「指示」「お願いする文章」と言う
- 失敗しても壊れないことを伝える。触ることへの不安が、最初の壁になります
3つ目は意外に効きます。「間違えても何も起きません」と最初に言うだけで、試す回数が増えます。
強制しない
「全員が月に〇回使うこと」といった目標を立てる会社がありますが、勧められません。
使う必要のない仕事の人が、回数を満たすために意味のない使い方をします。数字は達成されますが、業務は何も良くなりません。
見るなら、使用回数ではなく、「前より楽になった作業があるか」を聞いてください。1人でも「これは助かった」という作業が出てきたら、それを他の人に広げる方が確実です。
経営者自身が使ってみる
小さな会社ほど、これが効きます。社長が使っていない道具は、社員も使いません。逆に、社長が「この作業が楽になった」と話せば、興味を持つ人が出てきます。
もう一つ理由があります。自分で使ってみないと、どこまで任せられるかの感覚が持てません。感覚がないまま「AIでやっておいて」と指示すると、できないことを求めてしまいます。社員の側は、できないと言えず、無理に形だけ整えることになります。
使う作業は何でも構いません。挨拶文の下書き、業界誌の記事の要約、会議のメモ整理。週に2〜3回、2週間ほど続ければ、何が得意で何が苦手かが分かってきます。その感覚が、投資の判断にも、社員への指示にも効いてきます。
外部の研修を使う場合
社内で教えられる人がいない場合、外部の研修や教材を使う選択肢があります。選ぶときに見ておきたい点があります。
まず、受けた後に自社の業務で試す時間を確保できるかです。研修を受けただけでは身につきません。受講から1週間以内に、自分の仕事で使う場を作ってください。ここが抜けると、費用が無駄になります。
次に、扱う題材が自社の業務に近いかどうかです。汎用的な内容であっても構いませんが、その場合は「自社の作業に置き換えると何か」を考える時間を別に取ってください。
映像教材の場合は、いつでも見返せる利点があります。一度で覚えられなくても、実際に使う場面で該当する箇所を見直せる形になっているかを確認してください。
教える人を決める
社内に聞ける人がいるかどうかで、定着の度合いが変わります。
詳しい人である必要はありません。「一緒に試してくれる人」がいれば十分です。分からないことは、その場で調べればよいのです。
その人の負担が増えすぎないよう、時間を確保してください。通常業務に加えて教える役を担わせると、そのうち断られます。週に1時間でも、その役のための時間として認めておくと続きます。
まず始めるなら
興味を示している社員を1人選び、その人の仕事で30分だけ一緒に試してください。全社への展開は、そこで効いた作業が見つかってからで構いません。
使う前に決めておくことは社内で生成AIを使うときのルール、作業ごとの使い方は会議の議事録やメール返信の下書きにまとめています。
ここで扱っていない業務については、どの業務からAIを使い始めるかから探せます。議事録、見積書、メール、資料作成、問い合わせ対応など、作業別に分けてあります。
社内で進めるときの順番は中小企業のためのAI活用 はじめの一歩ガイド、始める前に確かめておくことはAI活用を始める前に確認しておきたいことにまとめています。
AIの使い方を学ぶ教材と業務で使えるツールをまとめて用意したい場合の選択肢として、当社ではライモBizをご案内しています。AI Labは合同会社SOL COMODAが運営する代理店で、本サービスの公式サイトではありません。

