労務の手続きは、システムを入れて確かに速くなりました。それでも入社の時期になると、案内のメールを書くところで手が止まります。何をいつまでに出してもらうか、毎回書き直しています。
システムが速くしたのは集めて処理する部分です。その手前の「説明する」「聞かれたことに答える」は、いまも人がやっています。ここはAIで軽くできます。
本記事は労務管理サービスの提供元による公式情報ではありません。機能や仕様については提供元の公式サイトでご確認ください。また、労務や社会保険の取り扱いについては、社会保険労務士など専門家にご確認ください。ここでは、労務の手続きをシステムで進めている会社の説明のしかたについて書いています。
手続きは進むが、説明は人が書いている
| 場面 | 人がやっている部分 |
|---|---|
| 入社 | 何をいつまでに出すかの案内 |
| 提出物の不備 | どこが足りないかの説明 |
| 制度の周知 | 規程を、社員が分かる言葉に直す |
| 退職 | 返却物、保険、税の説明 |
4つとも言葉の作業です。しかも、相手は手続きに慣れていない人であることがほとんどです。
入社の案内文を作る
入社の案内は、毎回ほぼ同じ内容です。それでも書き直しているのは、雇用形態や入社日で少しずつ違うからです。
入社する方への案内文を作ります。 【伝えること】 (提出物、期限、提出のしかた、当日の流れを箇条書きで貼る) 次の形にしてください。 ・最初に「いつまでに何をするか」を一覧で ・そのあとに、それぞれの詳しい説明 ・最後に、分からないときの連絡先 ・専門用語には、かっこ書きで説明を付けてください ・書かれていない提出物や期限を足さないでください
「専門用語に説明を付ける」が効きます。扶養、被保険者、給与支払報告といった言葉は、担当者には日常語でも、受け取る人には初めて見る言葉です。
提出物でつまずく場所は決まっている
不備で戻すやり取りは、担当者と本人の双方に負担です。しかも同じ箇所で繰り返し起きています。
過去の差し戻しの記録をAIに渡して、「同じ理由で戻しているものを、多い順に挙げてください」と頼みます。上位3つを案内文で先回りして説明すれば、やり取りが減ります。
多いのは、書類の一部だけを撮影している、旧姓のままになっている、家族の情報が抜けている、といった内容です。どれも案内に一行足すだけで防げます。
制度の説明を、社員が読む言葉にする
就業規則や各種の規程は、条文の形で書かれています。知りたいことだけを探すのが難しく、結局は総務に聞くことになります。
規程をAIに渡して、「社員がよく知りたいことを、質問と回答の形にしてください。規程に書かれていないことは『規程に記載なし』としてください」と頼みます。
最後の指示が要点です。これがないと、AIが一般論で埋めます。「一般的には〜」という回答は、自社の規程とは関係がなく、かえって混乱を生みます。
できた質問と回答は、配る前に内容が規程と合っているかを確認してください。制度の説明は、間違えると実害が出ます。
法律に関わる判断はAIに任せない
社会保険の加入の可否、労働時間の扱い、休暇の付与日数、退職金の計算。これらをAIに判断させないでください。
法令は改正されますし、自社の規程や労使の取り決めによっても変わります。AIが出した答えは、どの時点の、どの会社の前提で書かれたものか分かりません。
AIに任せてよいのは、すでに決まっていることを分かりやすく書き直す作業までです。判断が要る場面では、顧問の社会保険労務士に確認してください。
退職のときの案内
退職の手続きは、入社より説明することが多くあります。返却物、保険の切り替え、住民税の扱い、源泉徴収票の送付時期。本人が次に何をすべきかまで含めて伝える必要があります。
案内文をAIで作る場合、「会社がやること」と「本人がやること」を必ず分けてくださいと指示します。混ざっていると、本人が自分の作業を見落とします。
退職の事情はさまざまです。文面の温度は、最後に人が調整してください。事務的に整いすぎた案内は、受け取る側の印象に残ります。
問い合わせが集中する時期に備える
年末調整、入社の時期、賞与の前。労務には問い合わせが集中する時期があります。しかも毎年同じ質問が来ます。
去年の問い合わせをまとめてAIに渡し、「繰り返し聞かれている内容を挙げてください」と頼みます。出てきたものを、時期が来る前に案内として配ってしまいます。
労務のデータを外部のAIに入れてよいか
労務の情報は、社内でも扱いが最も慎重であるべきものです。氏名、住所、家族構成、給与、健康に関する情報が含まれます。
- マイナンバー、給与額、家族の情報、健康に関する情報は渡さない。用途を問わず、入れない運用にしてください
- 入力した内容が学習に使われない設定になっているか(利用規約とデータの取り扱いに関する記載を確認する)
- 特定の社員が分かる形の情報は渡さない
- 会社として外部のAIを使ってよいか、社内の取り決めを確認する
案内文を作るだけなら、個人の情報は一切渡さずにできます。提出物と期限の一覧があれば足ります。
システム側の機能で足りるかを先に見る
AIを足す前に、使っているサービスに同じ機能がないか確認してください。入社の案内の自動送信、提出物の督促、書類のひな形、よくある質問の掲示といった仕組みが用意されていることがあります。
サービス側でできるなら、その方が確実です。個人の情報が外に出ませんし、手続きの状況と連動します。どんな機能があるかは、提供元の公式サイトやヘルプでご確認ください。
AIを使うのは、案内文の中身を決める部分です。個人の情報を扱う部分ではありません。
まず試すなら
いま使っている入社の案内文を渡して、専門用語に説明を付けさせてみてください。個人の情報を渡さずにできて、1回で終わります。自分が当たり前に使っていた言葉が、いくつも出てくるはずです。
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