「あの作業はAさんしかできない」という状態を、どこの会社も抱えています。手順書を作ろうとしても、Aさん自身が忙しく、書く時間が取れません。
AIが効くのはここです。Aさんに書いてもらうのではなく、話してもらって、それを手順書の形に起こします。10分話せば、下書きができます。
なぜ手順書が作られないのか
理由は時間がないことだけではありません。
- ベテランは、自分が何をしているか説明できない。手順が体に入っていて、判断の部分を言葉にできない
- 書き始めるとキリがない。例外処理を書き出すと終わらず、途中で止まる
- 作っても更新されない。古い手順書は、ないより危険になる
1つ目に対しては、話してもらうのが有効です。書くのは苦手でも、「この作業どうやるんですか」と聞かれれば説明できます。
話してもらって手順書にする
手順は3つです。
1. 作業しながら説明してもらい、録音する
机の前で思い出しながら話すより、実際に手を動かしながら話してもらう方が、漏れが減ります。スマートフォンの録音で足ります。
聞き手は、分からないところで止めて質問してください。「いまなぜそれを選んだんですか」という質問が、いちばん価値のある情報を引き出します。
2. 文字起こしして、手順の形にする
作業の説明を録音した文字起こしです。作業手順書にしてください。 【文字起こし】 (内容を貼る) 【書き方】 ・番号付きの手順にする ・各手順は「何をするか」を1文で書く ・判断が必要な箇所は「〇〇のときは△△」の形で書く ・使う道具やソフトの名前は、話に出てきたものだけを書く 説明されていない手順を補わないでください。 説明が飛んでいる箇所は「確認が必要」と書いてください。
最後の1行が効きます。ベテランの説明は、当人にとって当たり前の部分が飛びます。その飛んだ箇所を、AIが埋めてしまうと危険です。「確認が必要」と印をつけさせて、後から聞き直します。
3. 別の人がやってみる
できた手順書を、その作業をしたことがない人に渡して、実際にやってもらいます。ここで止まった箇所が、説明の抜けているところです。
この工程を省くと、手順書は「分かっている人にしか分からない文書」のまま残ります。AIで下書きが速くなった分の時間を、ここに使ってください。
例外処理の書き方
手順書が完成しない原因の多くが、例外の書きすぎです。
対処は、本線と例外を分けることです。手順書の本文には、いつも通りの場合だけを書きます。例外は末尾にまとめるか、別の紙にします。
| 分け方 | 中身 |
|---|---|
| 本文 | 8割以上の場合に当てはまる手順 |
| よくある例外 | 月に何度か起きること。対処も書く |
| 判断が要る場合 | 誰に聞くかだけ書く(手順は書かない) |
3番目が大切です。すべてを手順書に落とそうとせず、「この場合はAさんに確認」と書いておく方が、実用的な手順書になります。
既にある手順書を直す
古い手順書が残っている場合、作り直すより見直す方が早いことがあります。
- 「この手順書を読んで、分かりにくい箇所を挙げてください」と頼む
- 「この手順書で作業する人が、途中で迷いそうな箇所を挙げてください」と頼む
- 「1文が長い箇所を短く書き直してください」と頼む
2番目が有効です。作った人には見えない箇所が出てきます。ただし、AIが挙げた点をすべて直す必要はありません。読む人が社内の人間であれば、説明しなくてよい前提もあります。
写真や動画と組み合わせる
文章だけでは伝わらない作業があります。機械の操作、荷物の積み方、画面の場所などです。
この場合、写真を先に撮り、その説明文をAIに書かせるという進め方があります。画像を読み取れるAIなら、写真を渡して「この画面で何をするか説明してください」と頼めます。
ただし、出てきた説明は、作業を知っている人が確認してください。AIは写っているものを説明できますが、なぜそうするのかは知りません。「ボタンを押す」とは書けても、「このとき赤ランプが消えているのを確かめてから押す」は書けません。
現実的な作り方は次の順です。
- 作業しているところを動画で撮る(手元が映るように)
- 音声を文字起こしして手順の下書きを作る
- 動画から要所の静止画を切り出して、手順に貼る
- 担当者が見て、判断の部分を書き足す
動画そのものを手順書の代わりにする方法もありますが、見たい箇所を探すのに時間がかかります。文章を主にして、分かりにくい箇所だけ画像を添える形が、後から使いやすくなります。
更新されない問題への対処
手順書は作った時点から古くなります。使われなくなる原因のほとんどがこれです。
現実的な対処は2つです。
- 最終更新日を大きく書く。古いことが分かれば、読む人は確認してから使います
- 直す人を決めておく。「気づいた人が直す」は、誰も直しません
AIで下書きが速くなったことの本当の効果は、手順書を作り直すことが負担でなくなる点にあります。大きく変わったら作り直す、という運用が現実的になります。
業務の情報を外部のAIに入れてよいか
手順書には、取引先名、システムの操作方法、社内の管理番号の付け方が含まれます。外部のサービスに渡す前に、次を確認してください。
- 入力した内容が学習に使われない設定になっているか(利用規約とデータの取り扱いに関する記載を確認する)
- 取引先固有の作業手順を含む場合、契約で情報の取り扱いが制限されていないか
- システムの認証情報(IDやパスワード)が手順書に書かれていないか
3つ目は、AIに渡す以前の問題です。手順書にパスワードが書かれている状態そのものを直してください。「別紙の認証情報を参照」という書き方に変えます。
まず試すなら
属人化していて困っている作業を1つ選び、担当者に10分だけ説明してもらってください。録音して文字起こしを通せば、その日のうちに下書きができます。
録音を扱う作業としては会議の議事録も同じ進め方です。日々の記録では日報と週報、社外向けの文書では見積書と提案書をまとめています。
ここで扱っていない業務については、どの業務からAIを使い始めるかから探せます。議事録、見積書、メール、資料作成、問い合わせ対応など、作業別に分けてあります。
社内で進めるときの順番は中小企業のためのAI活用 はじめの一歩ガイド、始める前に確かめておくことはAI活用を始める前に確認しておきたいことにまとめています。
AIの使い方を学ぶ教材と業務で使えるツールをまとめて用意したい場合の選択肢として、当社ではライモBizをご案内しています。AI Labは合同会社SOL COMODAが運営する代理店で、本サービスの公式サイトではありません。

