AIを入れたが定着しなかった、という話には型があります。技術の問題ではなく、進め方の問題であることがほとんどです。
よくある7つを挙げます。当てはまるものがあれば、始める前に直しておいた方が確実です。
1. 目的が「AIを使うこと」になっている
最も多い型です。「うちもAIを導入しないと」という話から始まり、何に使うかが後回しになります。
この状態で始めると、使うこと自体が目的になり、成果が出ているかを誰も判断できません。契約だけが続き、そのうち忘れられます。
直し方は簡単です。「どの作業を短くしたいのか」を1つ決めてから始めてください。議事録でも、見積の文面でも構いません。対象が決まれば、効果があったかどうかも判断できます。
2. いちばん忙しい人に任せる
「効率化が必要な人に使わせよう」という判断は自然ですが、これが止まる原因になります。
忙しい人には、新しいやり方を試す余裕がありません。今までの手順でやった方が間違いなく終わるため、結局使われません。試すには、うまくいかない可能性を引き受ける時間が要ります。
最初に試すのは、少し余裕のある人か、興味を持っている人にしてください。その人がやり方を確立してから、忙しい人に渡す方が早く進みます。
3. 完璧な答えを求める
AIが出したものに手直しが要ると分かると、「使えない」と判断してしまう例があります。
しかし、手直しが要るのは前提です。1時間かかっていた作業が、下書き5分と手直し10分になれば、それで十分な成果です。ゼロから書く負担と、直す負担は別物です。
判断の基準を「そのまま使えるか」ではなく、「全部自分でやるより早いか」に置き換えてください。この基準なら、多くの作業が該当します。
4. 全社一斉に始める
全員分のアカウントを用意し、研修を開き、同じ日から使い始める。整った進め方に見えますが、うまくいきません。
部署によって業務が違うため、同じ説明が全員に当てはまることはありません。自分の仕事で使う場面が見えない人が大半を占め、その人たちが使わないまま終わります。
1人か2人で始めて、効いた作業が見つかってから広げてください。遠回りに見えて、こちらの方が早く定着します。
5. 効果を大きく見積もる
「社員10人の作業が3割短くなれば、年間で大きな削減になる」という計算から始めると、実際の結果に落胆します。
現実には、効くのは文章を扱う作業に限られ、その作業に費やしている時間は、思っているより短いものです。1日8時間のうち、文章を書いているのは1時間程度、という人も珍しくありません。
見込みは小さく立ててください。1人が月に数時間、から始めれば、期待とのずれが小さくなります。
6. うまくいった使い方を共有しない
同じツールを使っていても、指示の出し方で結果が大きく変わります。ところが、その工夫は個人の中にとどまりがちです。
うまく使えている人と、使えていない人の差は、多くの場合ここにあります。効いた指示文を、そのまま貼り付けて使える形で残してください。共有フォルダにテキストファイルを1つ置くだけで構いません。
この蓄積がないと、担当者が辞めたときに使い方ごと失われます。
7. 決める人が使っていない
導入を決めた人自身が触っていないと、判断がずれます。
できないことを求めてしまう、逆に、できることを知らずに活用の機会を逃す。どちらも起きます。社員の側は「できません」と言いにくいため、無理に形だけ整えることになります。
週に2〜3回、2週間ほど自分で使ってみてください。何が得意で何が苦手かの感覚が持てます。この感覚が、投資の判断にも、社員への指示にも効いてきます。
ありがちな進め方の失敗
7つの型のほかに、細かい失敗もあります。よく見かけるものを挙げます。
1つは、ツールの比較に時間をかけすぎることです。どれを選ぶか検討しているうちに数か月が過ぎ、その間に得られたはずの効果を失います。文章を扱う作業であれば、主要なものはどれも大きくは変わりません。まず使ってみて、足りない点が出てから選び直す方が早く進みます。
もう1つは、導入の担当を決めないことです。「みんなで使ってみよう」で始めると、誰も責任を持たないまま終わります。進める人を1人決めて、その人が使う時間を確保してください。
3つ目は、失敗を責めることです。うまくいかなかった使い方を報告した人が叱られると、以降は誰も何も言わなくなります。合わなかった作業が分かることも、成果のうちです。
止まってしまった場合
すでに導入して止まっている場合も、やり直せます。順番は次のとおりです。
- 使っている人がいるかを確認する(1人でもいれば、その人の使い方を聞く)
- 誰も使っていないなら、対象の作業を1つに絞り直す
- その作業をしている人と、一緒に30分試す
- 効いたら、やり方をメモにして渡す
ツールを変える判断は、この後で構いません。多くの場合、道具ではなく進め方の問題です。変えても同じ結果になります。
うまくいっている会社の共通点
逆に、定着している会社には次の特徴があります。
- 対象の作業が、具体的に決まっている
- 経営者自身が使っている
- うまくいった使い方が、社内に残っている
- 使わない業務があることを認めている
- 3か月単位で、続けるかを見直している
5番目は、続ける判断と同じくらい、やめる判断を持っているということです。見直す場でやめる結論になることは、実際には多くありません。続ける理由が確認できれば、それで十分です。
4番目が案外重要です。全社で使うことを前提にしないことで、使える部署が着実に成果を出せます。使わない部署があってよい、と決めることで、進める側の負担も軽くなります。
進め方の詳細は社員にAIを覚えてもらう進め方、効果の見方はAI導入の効果をどう確かめるか、使う前の決めごとは社内で生成AIを使うときのルールにまとめています。
ここで扱っていない業務については、どの業務からAIを使い始めるかから探せます。議事録、見積書、メール、資料作成、問い合わせ対応など、作業別に分けてあります。
社内で進めるときの順番は中小企業のためのAI活用 はじめの一歩ガイド、始める前に確かめておくことはAI活用を始める前に確認しておきたいことにまとめています。
AIの使い方を学ぶ教材と業務で使えるツールをまとめて用意したい場合の選択肢として、当社ではライモBizをご案内しています。AI Labは合同会社SOL COMODAが運営する代理店で、本サービスの公式サイトではありません。

